エネルギーと環境(2004年10月1日執筆)

 産業革命以降、人類のエネルギー消費ペースは勢いを増して伸びています。石油などの消費にともない、光化学スモッグなどの大気汚染も過去には問題となったことがあります。近年では、酸性雨による森林破壊なども社会問題化しています。環境問題は、これまで形を変えながら我々に課題を投げかけてきました。

 現時点での一番大きな問題は、化石燃料消費によって排出される炭酸ガスが引き起こす地球温暖化現象です。炭酸ガスは、可視光は通過させるが赤外光を反射するという作用があり、これが温室効果となるのです。地球温暖化によって地球の平均気温が上昇し、南極などの氷が溶けて海水面が上昇し、南の島が海中に沈むというような予測まで出ています。(実際には、海水の熱膨張が主たる原因とされていますが・・・)

 1997年に開催された気候変動枠組条約第3回締約国会議(COP3、京都会議)では、先進国及び市場経済移行国の温室効果ガス排出の削減目的を定めた京都議定書が採択されました。これにより、炭酸ガス排出の抑制策が世界中で議論されるようになりました。

 一方、現在の石油資源の消費ペースが続くとすると、あと40年くらいか70年くらいで石油が枯渇すると言われています。同じ年に2種類の予測数値が出ているので、何とも言えませんが、あと数十年程度という感じでしょうか。この可採年数は、採掘可能な埋蔵量を、現時点での消費量で割ったものであるので、今後、アジア、南米、アフリカなどでの生活レベル向上により石油消費が増大すると、この数値は小さくなります。仮に中国やインドなど途上国での石油消費が先進国並みになると、あと10年で危機が来るという説や、採掘技術などが向上しもっと長い間大丈夫という説まで様々です。確かに、過去30年程度は、可採年数があまり変わっていません!?

 個人的には、100年後の気温を予測することは、1ヶ月先のの天気予報を予測するよりも難しいと予想します。また、地球規模で起こる現象は、多分野に原因と影響がまたがっているので人の手に余るところがあります。温暖化の議論の際に、水蒸気の影響が入っていないことも気になります。なぜなら、水蒸気は雲を作ると太陽からの光を反射し昼間は気温を下げ、夜は放射冷却を妨げるので気温を上げる効果が知られています。この変化は、時間単位で進行していることから、水蒸気の影響を考慮しないことは非常に危険であると考えます。

 原子力は炭酸ガスを出さないので、地球温暖化解消には期待をもたれますが、安全面での不安があり、現行の使用方法では有限な資源となってしまいます。また、放射性廃棄物の長期貯蔵場所も国内には見つけにくい状態です。

 太陽光や風力などのクリーンエネルギーにも期待が持たれますが、自然エネルギーは希薄であり、大きなパワーを得るためには広大な面積を必要とします。これは仕方がないことで、もし自然エネルギーの密度が高かったら、人間が焼けこげたり、風で吹き飛ばされてしまいます。しかし、このような多くは集められないエネルギーを有効に活用することは、非常に重要になってきます。

 いずれにしても、資源や大半のエネルギーは限られているので、省資源、省エネルギーに関する研究や、新エネルギー源の開発は必要不可欠であると考えられます。

 現時点では、国全体の支出からみると、けっして大きな割合とはなっていませんんが、少しでも無駄をなくすよう努力する必要があると言えるでしょう。

参考文献
若井和憲:「エネルギーと大気環境問題」応用物理 No.7 (2003).