燃費の理論限界

電気自動車とガソリン車はどっちが、環境性能がよいのか? これは少し考えるのが難しいのですが、考えてみますしょう。

有人の電気自動車の燃費はガソリン1リットルの理論エネルギーを8776Wh(低位発熱量)として、現在、5600km/Lほどの燃費を達成できています。一方、ガソリンエンジンを搭載したエコラン車では3500km/Lや、中には4000km/Lを超える記録のものがあります。一見すると、電気モータを使った電気自動車の方が燃費性能(=省エネルギー性能)が良いように思えます。しかし、そんなに単純な話ではありません。

化石燃料から電気エネルギーを作り出す火力発電所は、良いもので40%。最新型では50%を超え開発中のもので60%の変換効率を達成しつつあります。でも、この変換効率だと電気自動車の燃費は2200km/Lから、最高でも3300km/Lということになります。ですので、ガソリンエコラン車が優勢ということになってしまいます。

でも、電気モータの変換効率は96%もある(100%に近い)ので、ガソリンエコラン車のエンジンは、火力発電所並以上の変換効率を叩き出していることになってしまいます。

なぜ、一見するとこんなことが起こってしまうのか?

その原因は、ガソリンエコランとEVエコラン競技の細かな差が考えられます。まず、ガソリンエンジン車では、競技ルールの違いにより、ドライバーの体重調整がありません。一方、電気自動車レースでは、たいがいのレースでは70kgになるようバラストで重量調整を行います。これにより、体重40kgの超軽量ドライバーを搭載すると30kg程度の差が出ます。電気自動車は重たいバッテリを搭載していることもあり90〜100kgの総重量となります。そのため30kgの差は、30%程度の転がり抵抗を削減できると言えます。

もう一つの原因として、競技中の速度差が挙げられるようです。電気自動車エコランの巡航速度は、秋田の大会で48〜50km/h。折り返しポイントなどの減速を含めた平均速度でも45km/h程度です。これに対して、ガソリンエコランの平均速度は25km/h。空気抵抗は速度の2乗に比例し、パワーは3乗に比例します。速度が半分になれば、空気抵抗によるエネルギー損は1/8にまで低下します。25km/hと45km/hとしても1/5〜1/6にはなります。

そこで、ファラデーマジック2をガソリンエコラン車と同じ条件で走行させたとして計算してみることにします。ファラデーマジック2では、45km/hの速度で走行している場合、約半分が転がり抵抗で残りが空気抵抗になると考えています。これが25km/hになると速度は0.556に低下し、質量が0.7なので転がり抵抗成分は0.556*0.7=0.388となります。空気抵抗成分は0.556^3=0.1714となります。この両方を考えると0.388*0.5+0.1714*0.5=0.28。約1/4〜1/3のパワーで走行できることになります。燃費に換算した場合、速度が低下した分は距離が縮むので、これを補正して計算すると、「バラストを降ろして25km/hで走行する」と元の値の0.435となり、燃費は4倍近くにまで伸びることになります。

したがって、ガソリンエコランと同様に平均25km/hで走行し、バラストを搭載しないときのファラデーマジック2の燃費はガソリンの理論エネルギーで考えると1万km/L以上と途方もない値になります。秋田での走行は折り返しによる減速もあり、理想的な直線路であれば、あと数%程度は距離を伸ばすことができるでしょう。

これが本当であれば、72W*0.28=20Wで時速25km/hの速度が出せることになります。そこで、東海大学木村研究室では密かに検証してみました。

 

ガソリン対モータ、どっちがいいの?

話を元に戻しましょう。電気自動車とガソリン車はどっちが、環境性能がよいのか? 鉄道の歴史を振り返れば、蒸気機関、ディーゼル、電気という歴史をたどりモータの方が経済性を含めて良さそうです。自動車の歴史をみても、ハイブリッド車などの電化自動車が燃費を向上させています。運転状況などにもよりますが、しばらくは両者の切磋琢磨が引き続き行われることでしょう。もちろん、私は太陽光発電や風力発電などの自然エネルギーが使えるモータがエンジンに負けるはずはないと信じ、電気推進派なのですが・・・。