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東海大学木村研究室は、小型電気自動車の開発を行うとともに、走行テストを兼ねて電気自動車の燃費レースである「ワールド・エコノ・ムーブ(WEM)」、「ワールド・エレクトリック・ヴィークル・チャレンジ(WEVC)」などの大会に出場しています。 ハイブリッド車、燃料電池車、ソーラーカー、電気自動車は、元のエネルギー源が違うだけで、基本的にはモータの力を使って走っています。エンジンは30〜40%程度の変換効率と言われていますが、モータは2倍以上の80%以上(最高レベルで90〜97%)が実現できるので、省エネルギー化が進められます。また、ブレーキをかけるときには、モータを使って発電を行う回生制動が使えます。これにより、走行中の運動エネルギーを電気エネルギーに変換され、バッテリや電気二重層キャパシタなどに蓄えられます。ブレーキをかけるとガソリンタンクの中にガソリンが戻されるような感じです。こんなことは、一般のエンジン車ではあり得ませんが、モータを搭載した電気自動車であれば、発電したエネルギーをバッテリーに蓄えられるのです。 エコノ・ムーブはスクーターなどに使われるシール式鉛バッテリー(古河電池FT-4L-BS: 12V-3Ah, 写真左)を4個搭載し、2時間の内にどこまで走れるかを競う燃費レースです。バッテリー蓄えられるエネルギーは12V×3Ah×4個=144Whとなり、100Wの電球を約1時間半点灯するのに必要なエネルギーとほぼ同じです。電気代に換算すると1kWhが約23円程度ですので、たったの3.3円分にしかなりません。ガソリン1リットルの理論エネルギーを8776Whとすると、約5000km/Lの燃費で走れることになります。実際には、ガソリンから100%の効率で電気エネルギーを取り出すことができないため、火力発電所から送電されて届く効率を40%程度に見積もると、約2000km/Lの燃費に換算できます。いずれにしても、非常に高い燃費性能を発揮しています。 このような超低燃費を実現するには、様々な抵抗成分を低減した車体が必要となります。タイヤが転がる際に発生する「転がり抵抗」は車体の重さが軽いほど小さくなることから、バッテリ込みの車体質量は、ファラデーマジックの場合で23kgと非常に軽量に仕上がっています。また、タイヤ自身の性能も重要であり、当研究室ではミシュラン社のエコラン専用タイヤを使用しています。近年では、一般乗用車用にも転がり抵抗を減らした省エネタイヤが販売されるようになりました。 また、転がり抵抗と同じくらいの大きさで、空気抵抗も発生しています。そのため、空気抵抗が小さくなるように、流線型形状をイメージしてボディーが設計されています。 この他にも、電気二重層キャパシタを用いた回生ブレーキや、アモルファスコアを用いたDCブラシレスモータなど様々な技術を開発・導入しています。 ファラデーマジック(2002〜)
ファラデーマジックは木村研究室が製作した電気自動車の1号車です。電気磁気学や電気化学の分野で様々な現象を発見した科学者マイケル・ファラデーにちなんで名前が付けられました。
モータについては市販化されました。電波新聞、日経産業新聞等で報道されました。
ファラデーマジック2(2004〜) 2号機となるファラデーマジック2は現在製作中ですが、2004年5月のWEM大会に間に合うかは微妙です。まだ、完成していないので数値等は予定スペックです。噂ではスバルさん、ミツバさん、ZDP池上さんなど強豪チームが14インチタイヤの装着を計画中という話を耳にしますが、走行性能の向上が見込めるか確証が無かったため、今回はあえて小さくすることはしませんでした。
2004年4月25日、秋田自動車道が雪で通行止めになる中、大潟村ソーラースポーツラインでの試走を強行しました。5月3〜4日にかけてワールド・エコノ・ムーブに出場し、ファラデーマジック2は、80kmを超える新記録を樹立し、総合優勝を果たしました。現時点で、電気自動車の低燃費性能で日本一(=世界一)の性能を有しているといえます。1Ep(エコパワー)はガソリン1リットルの理論エネルギーですが、5000km/Lを突破しました。(ガソリン車と比較するために火力発電の変換効率を40%程度とした場合で2000km/Lを超える燃費といえます。)なお、大会の模様はAAB秋田朝日放送で5月22日(土)15:00〜15:55に放映され、6月1日に発売される二玄社カーグラフィック7月号でも記事が掲載されました。 ファラデーマジック2は、2004〜2008年のワールド・エコノ・ムーブ(World Econo Move: WEM)で5連覇を達成しました。2008年には、前人未踏の90.422kmの記録を樹立しました。2010年以降は、固体高分子型燃料電池を搭載した燃料電池ハイブリッド車としてWEM大会に出場し、燃料電池部門で連覇を達成しました。
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