モータはなぜ省エネルギー性能が高いのか?

電気モータが素晴らしい点は、なんといっても省エネルギー性能が高い点です。ここでは、モータがどうして良いのかをまとめてみます。

1.なんといっても変換効率が高い
変換効率はガソリンエンジンで30%、ディーゼルエンジンで40%程度といわれています。これに対して電気モータは80%以上、うまく作れば90%以上も達成可能です。つまり、エネルギー変換効率は2〜3倍もモータの方が高いのです。また、「100%-変換効率」が、ほぼ捨てられる熱エネルギーとなるため、電気自動車の排熱は、ガソリン車などに比べて非常に少なくなります。これは、都市部で起こるヒートアイランド現象の抑止にも効果的です。当研究室では、96%以上の効率のモータの製作に成功しているので、電気エネルギーのほとんどが機械エネルギー(動力)に変換できます。

2.発電できる
モータは発電機と基本的には構造が同じであり、うまく使えば走行中の運動エネルギーを電気エネルギーに変換して減速する「回生ブレーキ」を実現することができます。このエネルギーをバッテリに蓄えることができれば、再加速の際に利用することができます。通常の機械式ブレーキでは、ディスクやドラムにパッドを押し当てて、摩擦熱として運動エネルギーを大気中に捨てることで減速していますので、再加速のときにエネルギーを余計に消費することになります。エンジンブレーキもエンジンの吸排気ロスを利用しているので、燃料カットでアイドリングレベルの燃料を節約できるかもしれませんが、熱エネルギーを放出します。電車やハイブリッド車などに搭載されている回生ブレーキは、実際にはあり得ませんが「エンジンブレーキをかけると、大気中の二酸化炭素と水蒸気からガソリンが生成されてガソリンタンクに燃料を戻す」くらい、画期的な技術なのです。

3.電気エネルギーが使える
当たり前ですが、電気エネルギーが使えることもモータのメリットかもしれません。というのも、ガソリンや軽油を使用するエンジンでは、地球温暖化を引き起こすとされる二酸化炭素CO2ガスを排出してしまいます。また、限りある石油資源を消費してしまいます。電気エネルギーは、もちろん火力発電でも得ることができますが、自然エネルギーである、太陽光発電、風力発電、地熱発電、バイオマス発電などによるエネルギーを消費することができるのです。放射性廃棄物などの課題もありますが、炭酸ガスを出さない原子力発電による電気エネルギーも使うことができるのです。また、水素ガスや都市ガスなどを使った燃料電池からも電気エネルギーが得られ、こちらは、コージェネレーションによる熱利用も可能です。いずれにしても、質の高い電気エネルギーが使えることがモータの利点と言えるでしょう。

では、なぜ電気自動車の実用化が難しいのでしょうか?
1890年代は、電気自動車が自動車の主役でした。そして、時速100km/hの記録を樹立したのも電気自動車がはじめてでした。蒸気機関やガソリンエンジンの自動車もあることはあったのですが、当時は性能が悪く、排ガスも真っ黒で、運転も難しいことから、電気自動車が一番人気があったのです。でも、遠くに移動するには大きなバッテリが必要です。ガソリンエンジンの高性能化にともない、航続距離が短い電気自動車は市場から姿を消していきました。

しかし、エネルギー資源枯渇や地球温暖化などの問題が深刻化し、高性能なリチウムイオン電池が登場したことなどから、電気自動車は100年の時を経て、復活しようとしているのです。