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第5回 冷蔵庫の消費電力2 (2011年7月19日)

2008年4月13日版はコチラ

どんどん低下する冷蔵庫の消費電力
3月11日の東日本大震災によって引き起こされた津波によって、福島第1原子力発電所で水素爆発が起こるとともに、メルトスルーが引き起こされたのではないかと心配されています。2011年7月の東京電力管内では電気使用制限令が出されるなど、オイルショック以来の規模での節電が求められています。自家発電による余剰電力などの埋蔵電力の存在もあり実際にどの程度電力が足りないのかは不透明ですが、いずれにしても化石燃料枯渇や地球温暖化に対処するためにも、(仮に温暖化が深刻にならなかったとしても)節電を心がけることは、正しいことだと確信します。とくに24時間365日稼働する冷蔵庫は、一般家庭における消費電力の割合の中でも上位にあり、節電をする大きなポイントとなっています。そこで、2011年7月時点で各社の最新冷凍冷蔵庫の消費電力性能を検証することにしました。

ここで示す消費電力量は2006年5月以降に制定された、実際の利用実態に近い日本工業規格の「家庭用電気冷蔵庫及び電気冷凍庫の特性及び試験方法(JIS C 9801)」によって測定されたものです。同じような容量の冷蔵庫がラインアップされている場合には、できるだけ最新のものをピックアップしています。


冷蔵庫の総容量に対する年間消費電力量(2011年7月調査)

このグラフを見ると、415L以上の大型冷蔵庫の消費電力量が、それよりも小型のものよりも少なくなっていることがわかります。これは各社のフラッグシップ製品に、メーカーが持てる技術を多く投入した結果であると考えられます。販売価格が高めである代わりに高付加価値製品となっているので、各メーカーがもつ省エネルギー技術を投入することができているのだと考えられます。さすがに500Lとか600Lになってくると消費電力量は徐々に増えていきますが、120Lから400Lまでの製品に比べて少なくなっているということが分かります。このような逆転現象が顕著に表れるようになったのが2011年7月時点での調査結果の特徴であるといえます。

以前に紹介した2008年4月13日に紹介したデータは、2006年5月以降の方法で測定されたものであるので、比較することができます。なお、2005年5月以前の冷蔵庫との表記ずれ(違いは)、Impress Watch社の家電Watchに掲載された「三浦優子の「家電業界通信」 冷蔵庫の電気料金表示が4倍になった理由 〜使用実態に迫った新JIS規格」に出ていますのでご参照下さい。2006年5月の前後では、表示されている年間消費電力量に4倍以上の差もあるとのことですから、大きな違いです。


冷蔵庫の総容量に対する年間消費電力量(2008年4月調査)

2011年7月と2008年4月を比較すると、全体的に消費電力は下がっていますが、やはり415L以上での消費電力低減が目覚ましく、約半分になっていることがわかります。2008年4月時点では60cm幅のいわゆるマンションサイズで375L付近に消費電力が最も低い機種が存在したのですが、この激戦区は価格競争が厳しいためか、消費電力の低下は控えめになり、大型機種で躍進したのだと思われます。次に、冷蔵庫の総容量に対する年間電気代を示します。


冷蔵庫の総容量に対する年間電気代

2008年4月時点では1kWhあたり22円という値を使用しましたが、今回は23円という値を使用しました。年間で500kWhを使用する冷蔵庫は2008年4月からたった3年余りで進化し、大型にはなってしまいますが、年間の電気代で約半分の6,000円程度にまで安くなっていることがわかります。2008年に販売されていた冷蔵庫は年間12,000円ほどですので、年間の差額は6,000円となります。10年で6万円程度の差になりますので、冷蔵庫購入時点ではこの価格差も考えに入れておいた方がよいでしょう。もちろん、CO2排出量もほぼ半減になります。環境省が提示している「CO2排出係数=0.555kg-CO2/kWh」を用いて計算すると、250kWhの節電で、約140kgの炭酸ガスの排出を抑えることができます。とにかく、冷蔵庫の買い換えで8%程度の電力削減が期待できると考えられます。あとは、白熱球をLED電球に交換するなどで、15%の削減は達成できるのではないでしょうか?


冷蔵庫の総容量に対する1L当たりの年間消費電力量

冷蔵庫の総容量に対する1L当たりの年間消費電力量を上図に示します。容量が大きくなると、容量当たりの効率が向上していますが、415Lよりも大きくなると効率は頭打ちになっていることがわかります。置き場所に余裕があるのであれば、年間消費電力量が300kWh以下の大型の冷蔵庫を購入してもいいのかもしれません。いずれにしても省エネ性能★★★★★(5つ星)のものは選びたいところです。2011年7月時点のランキングでは、パナソニックのNR-F505XV、HITACHIのR-S50AMがともに501Lの容量で220kWh/年の消費電力量でトップレベルになるようです。シャープも容量は若干小さくなりますが、465LのSJ -XW47T、440LのSJ -XW44Tが同じく220kWh/年で、消費電力量が少なくなっています。ちなみに、220kWh/年÷365day/年÷24h/day=25Wh/hとなり、平均消費電力はなんと25Wと格段に少なくなっています。以前は120Wくらい消費するのは当たり前だったのに・・・。

ここで使用したメーカー公表のデータをリストにします。ただし、これらの数値はあくまでもメーカー公表値であり、実際の使用条件などで、実際の消費電力量などは異なってきますので、あくまでも参考値です。なお、50Hzと60Hzで消費電力が異なる場合には、数値が大きい方を採用しています。(インバータ式など、ほとんどの機種で同じ値です。)

メーカー 型番 容量(L) 年間消費電力量(kWh/年) 1L当たりの年間消費電力量 (kWh/L年) 年間電気代 (円/年)
Panasonic NR-F605XV 603 280 0.464 6440
Panasonic

NR-F605T

603 310 0.514 7130
Panasonic NR-F555XV 552 280 0.507 6440
Panasonic NR-F555T 552 290 0.525 6670
Panasonic NR-F505XV 501 220 0.439 5060
Panasonic NR-F505T 501 270 0.539 6210
Panasonic NR-F475TM 470 270 0.574 6210
Panasonic NR-F455T 451 270 0.599 6210
Panasonic NR-E435T 426 260 0.610 5980
Panasonic NR-FTF424 415 330 0.795 7590
Panasonic NR-C370M 365 380 1.041 8740
Panasonic NR-C320M 321 370 1.153 8510
Panasonic NR-B173W 168 320 1.905 7360
Panasonic NR-B143W 138 300 2.174 6900
Panasonic NR-A80W 75 210 2.800 4830
Panasonic NR-A50W  45 190 4.222 4370
SANYO SR-S40U 400 450 1.125 10350
SANYO SR-361U 355 440 1.239 10120
SANYO SR-261U 255 430 1.686 9890
SANYO SR-141U 137 340 2.482 7820
SANYO SR-111U 109 270 2.477 6210
SANYO SR-81T 75 210 2.800 4830
SANYO SR-51T 47 190 4.043 4370
SHARP SJ-XF60T 601 280 0.466 6440
SHARP SJ-XF56T 560 270 0.482 6210
SHARP SJ -XF52T 515 250 0.485 5750
SHARP SJ -XW47T 465 220 0.473 5060
SHARP SJ -XW44T 440 220 0.500 5060
SHARP SJ -PW42T 416 350 0.841 8050
SHARP SJ -PW38T 380 340 0.895 7820
SHARP SJ-WA35T 345 460 1.333 10580
SHARP SJ -29T 290 380 1.310 8740
SHARP SJ -23T 228 340 1.491 7820
東芝 GR-D62F 618 280 0.453 6440
東芝 GR-D55F 548 280 0.511 6440
東芝 GR-D50F 501 250 0.499 5750
東芝 GR-D47F 471 250 0.531 5750
東芝 GR-D43N 427 300 0.703 6900
東芝 GR-D38N 375 470 1.253 10810
東芝 GR-D34N 340 460 1.353 10580
東芝 GR-C80A 78 210 2.692 4830
東芝 GR-C50A 46 190 4.130 4370
日立 R-A6200 620 280 0.452 6440
日立 R-A5700 565 260 0.460 5980
日立 R-SF52AM 520 230 0.442 5290
日立 R-S50AM 501 220 0.439 5060
日立 R-SF48AM 475 230 0.484 5290
日立 R-S42AM 415 230 0.554 5290
日立 R-S37BMV 365 320 0.877 7360
日立 R-S27AMV 265 330 1.245 7590
日立 R-26BA 255 360 1.412 8280
日立 RF-U11ZF 113 370 3.274 8510
日立 R-5ZP 45 190 4.222 4370
三菱電機 MR-Z65S 645 440 0.682 10120
三菱電機 MR-EX62S 620 310 0.500 7130
三菱電機 MR-EX57S 565 290 0.513 6670
三菱電機 MR-E52S 520 290 0.558 6670
三菱電機 MR-E47S 465 270 0.581 6210
三菱電機 MR-A41S 405 390 0.963 8970
三菱電機 MR-F40S 400 380 0.950 8740
三菱電機 MR-C37S 370 470 1.270 10810
三菱電機 MR-C34S 335 460 1.373 10580
三菱電機 MR-D30S 300 420 1.400 9660
三菱電機 MR-H26S 256 430 1.680 9890
三菱電機 MR-P17S 168 320 1.905 7360
三菱電機 MR-P15S 146 300 2.055 6900
ハイアール JR-NF305A 305 450 1.475 10350
ハイアール JR-NF232A 232 450 1.940 10350
ハイアール JR-NF170D 168 390 2.321 8970
ハイアール JR-NF140D 138 360 2.609 8280
ハイアール JR-N100C 98 267 2.724 6141
ハイアール JR-N40C 40 140 3.500 3220

お断り:上記データは2011年7月19日時点の調査のものですので、新製品等が登場することで値などは変化します。また、東海大学木村研究室が省エネルギーの観点から見たものであり、使い勝手や、デザイン、便利機能などはほとんど考慮されていません。実際の購入の際には、ご自身で総合的に判断されることをお勧めします。なお、冷蔵庫の斡旋を目的としていませんので、個別のお問い合わせにはお応えできない場合もあります。ご容赦ください。