ソーラーカーの技術

2009年10月、オーストラリア大陸縦断3,000kmのソーラーカーレース*1に東海大学が新型ソーラーカーで出場!!

オーストラリアで開催されるグローバル・グリーン・チャレンジ

2009年10月25日〜31日にかけて、オーストラリア大陸のダーウィン〜アデレード間3,000kmを走破する、CO2ガスの排出が少ない自動車によるラリーである、「グローバル・グリーン・チャレンジ(Global Green Challenge: GGC」が開催されます。この大会は、1987年に始まったワールド・ソーラー・チャレンジ(World Solar Challenge: WSC)に、燃料電池車、電気自動車、ハイブリッド車などの、温室効果ガス排出を抑えた地球に優しい乗り物の環境性能を競うものです。

オーストラリアは、環境対策に力を入れている国であり、大陸内部の砂漠地帯は、豊富な日射量が得られることから太陽光発電所の設置場所としての利用に適しています。このオーストラリア大陸の中央部を太陽光のエネルギーだけで走行できるソーラーカーで縦断するラリーが、GGCのソーラーカー部門です。この大会に東海大学チャレンジセンター・ライトパワープロジェクトが、新型ソーラーカーを開発・製作して参戦する計画であり、すでにエントリー手続きを終えました。


Global Green Challenge (World Solar Challenge) 3,000kmのコース

ソーラーカーの環境性能

ボディ上面に設置された太陽電池で発電した電気エネルギーで走行できるソーラーカーは、エネルギーを自前で確保できる電気自動車であり、一度作ってしまえば太陽がある半永久的に限り走り続けることができる究極の環境車です。しかし、地球上では太陽光は人が焼け死ぬほどのパワーを持っていない=エネルギー密度が低いため、太陽光を効率よく変換するとともに、軽量化を徹底し、空気抵抗を極限にまで減らし、高効率なモータを搭載し、超低転がり抵抗タイヤを装着するなどで、1日に500km以上を移動することができます。高性能太陽電池を利用すれば1日あたり約800kmを移動することも可能となります。しかも、走行時に排出される炭酸ガスはゼロ。もちろん太陽光発電の際にも、炭酸ガス排出はありません*2。

新型ソーラーカー「Tokai Challenger」の特徴

東海大学では、1993年に開発したソーラーカー「Tokai 51SR」以降、シャープ製太陽電池を使用してきました。東海大学としては、1993、1996、2001年にオーストラリアのWSCに出場しています。


2001年WSCに出場したソーラーカーTokai Spirit

これらの実績を踏まえ、今回の2009 GGCに向けてシャープ株式会社より、高性能な太陽電池の提供を受け新型ソーラーカー「Tokai Challenger」を開発することになりました。この太陽電池はセル変換効率30%、出力1.8kWの化合物太陽電池です。この化合物太陽電池は、三接合タイプ(トリプルジャンクション)であり、過酷な環境での使用に適しています。これまでは、主に人工衛星用に使用されてきましたが、今回、この太陽電池技術がソーラーカーに、用いられることで、これまで以上に高性能なソーラーカーが実現できます。


新型ソーラーカーTokai Challengerの完成予想図

このGGCのソーラーカー部門に向けて、東海大学OBで世界的なラリードライバーである篠塚建次郎氏を特別アドバイザーに迎え入れます。レースマネジメントからドライビングまでの幅広いアドバイスをを受け、GGC大会での優勝を目指します。

この他にも、モータ、バッテリ、タイヤなどの性能を高めることで、ソーラーカーの性能を総合的に高めていきます。

新型ソーラーカーの諸元(2009年11月時点*3)

Length 4980mm
Width 1640mm
Height 930mm
Track 1300mm
Wheel Base 2100mm
Weight 160kg
Solar Array SHARP, Compound Solar Cell, 6m², Efficiency 30%, Output Power 1.8kW
MPPT Mishimaki, Buck & Boost Type, 24 channels, Efficiency >98%
Battery Panasonic, Li-ion Battery 25kg 5.6kWh
Motor Mitsuba, Brushless DC, Direct Drive, Iron Based Amorphous Core >97%
Controller Mitsuba, 3 Phase PWM control >99%
Tire Michelin, 95/80-16 Radial x 3
Wheel GH Craft, 16 inch Carbon Disk x 3
Brake Front: AP Hydraulic Disc, Rear: Hydraulic Disc & Regeneration Brake

 

遠征メンバー(2009年10月時点)

チームマネージャー 竹内豪(工学部電気電子工学科3年)
ドライバー 篠塚建次郎(ラリードライバー)、徳田光太、伊藤樹(工学部動力機械工学科4年、2年)、佐川康平(富士重工業)
セーフティーオフィサー 渡辺友香里(工学部機械工学科4年)
テクニカルディレクター 池上敦哉(ヤマハ発動機)
スタッフ 学生13名、菊田剛広(日本ケミコン)
プロジェクトコーディネーター 山田修司(教育支援センター技術支援課)
プロジェクトアドバイザー 木村英樹(工学部電気電子工学科教授)


出場予定チーム

チャレンジクラスのエントリーリスト
チーム名
車名
No
University Michigan Infinium 2 USA
Nuon Solar Team Nuna5 3 Netherlands
Leeming HS TBA 5 Aus (WA)
Sakarya University Saguar 6 Turkey
University College London Solar Fox 7 United Kingdom
Umicore Umicar 8 Belgium
MIT Eleanor 9 USA
Uniten Solar Ranger 10 Malaysia
Cambridge University Eco Bethany 11 United Kingdom
HS Bochum BoCruiser 12 Germany
Willeton SHS Solar Flair 14 Aus (WA)
University of Tehran Persian Gazelle 17 Iran
Stanford Uni Apogee 16 USA
Heliox Heliox ll 18 Switzerland
Solar Team Twente Twente Two 22 Netherlands
Durham University DUSC 28 United Kingdom
Principia College Ra 7 32 USA
Istanbul Tech University Ariba 4 34 Turkey
Belemos Clermont-Ferrand Belemos 41 France
HS Bochum SolarWorld No 1 42 Germany
Delhi College of Engineering Solaire 43 India 
Netaji Subhas Inst. Tech. Advay 49 India 
Ecole Polytechnic du Montreal Esteban 55 Canada 
Tokai University Tokai Challenger 60 Japan
UNSW Sunswift lV 73 Aus (NSW) 
TAFE SA Solar Spirit 75 Aus (SA)
Eclipse Eclipse Vl 92 Canada
Nat Kaohsiung Uni of Applied Sc. ApolloV 95 Taiwan
Aurora Vehicle Association Aurora 101 101 Aus (Vic)
McMaster University Phoenix II 116 Canada
Nanyang Tech University Nanyang Venturere 168 Singpore
Omega Solar - Durham Coll Uni Ontario Arctic Sun 463 Canada

 

アドベンチャークラスのエントリーリスト
チーム名
車名
No
Helios Helios IV 4 France
Kormilda College Towards Tomorrow 13 Aus (NT)
Osaka Sangyo University OSU Model S 24 Japan
GoKo High School Hiroshima GoKo 46 Japan
Energy Education Australia Kelly 62 Aus (SA)
CDPM University of Malaya Merdeka 2 94 Malaysia
Aurora Vehicle Association Southern Aurora 99 Aus (Vic)

*1 Global Green Challengeのソーラーカー部門。
*2 太陽電池製造時などの際には炭酸ガス排出はあります。エネルギーペイバックタイムは、一般に2〜3年程度と言われています。
*3 大会後に得られた実測データを反映しました。